溜まった新聞を読む。

※ 4月23日付の毎日新聞中島岳志の書評で「生き直す 免田栄という軌跡」高峰武著の紹介があった。その中で、免田さんは釈放後自分を取り調べた刑事に会いに行き、「なぜ私を逮捕したか」「証拠はどうなっているか」「現在の心境はどうなんですか」などを問うた。

すると全ての質問に対し、「命令でやったんだから、今どうって感じてはいない」という答えが返ってきたという。

中島岳志もすぐ後に書いているが、私もここまで読んで『アイヒマンと同じだ!』と思った。

ユダヤ人撲滅作戦を担ったアイヒマンは、裁判で「国家の命令や法令に従っただけで、自分には責任がない」と無罪を主張した。傍聴したハンナ・アーレントは思考停止した人間が外的規範に追随したことで実行された陳腐なものと指摘した。

免田さんに襲い掛かったのは、警察や検察、裁判所という組織に忠実な人間による「凡庸な悪」に他ならない。

著者の高峰毅氏は熊本日日新聞出身で今は熊本学園大学特命教授との事。本には水俣事件も述べられている。「凡庸な悪によって蹂躙された人生」を送らされる人が増えないために。

アイヒマンや免田さんを獄中に繋いだ、組織に忠実な凡庸な思考停止した人間の対極にいるのがむのたけじや村山常雄だ。

むのたけじは自らの戦争責任をとるために、新聞記者を辞め、故郷秋田横手でミニコミ紙「たいまつ」を出し続けた。

村山常雄は本来国がやらねばならないシベリア抑留死亡者名簿を一人で作った。70歳からパソコンを習い、一千万円以上の自費を投じ、10年以上の年月をかけ、やり遂げた。