映画「冒険者たち」

印象に残った人物が二人いる。

一人はレティシアの甥の少年。1967年のフランスの田舎は貧しかったようだ。少年は博物館の案内アルバイトや浜で魚介を取って、生活の足しにしている。
簡単な九九すら覚えていないのに、案内のための事柄は棒暗記している。
両親がいて、一人っ子のようすなのに、生活は苦しそうだ。
このころの日本はどうだっただろう。決してまだ豊かとはいえないが、一人っ子がアルバイトをして家計を助けている家は、すでに多くはなかっただろう。

もう一人は財宝発見の分け前を狙う元パイロット。とてもいいかげんな男。
海上警備艇を装った賊を見破り、銃撃戦になるが、レティシアが亡くなってしまう。
彼はその責任を深く感じている。賊に捕まり、マヌーの居所を確認するため連れてこられた時、彼じゃないという。
二度目に確認を求められた時、命惜しさに本当のことを言うとわたしは思ったが、男は彼じゃないと言い、車内で射殺される。

いいかげんな悪人が自らの命を捨ててでも、守ろうとすることがある。
イゴールの約束」という映画を思い出した。
不法就労で働かせていたアフリカからの移民男が労災死した。この男の死を闇に葬ろうとしたブローカーの男の息子(この少年も平気で盗みをする毎日を過ごしていた)が、父親に抵抗して亡くなった移民男の妻子を守るという内容。

人間は善人と悪人に分かれるのではなく、両方が同居しているということを思わせる。

「冒険・・」のラスト近くで、息を引き取る間際のマヌーに、相棒のローランドが「レティシアはお前と暮らしたがっていた」(これはローランド自身がレティシアから言われた言葉)と最後のことばを送る。
マヌーは察していて、「この大うそつきめ」と返し、息を引き取る。
こう言わせないと映画にならないのだが、最後の別れのときでも、ローランドはローランドらしく、マヌーはマヌーらしいのだ。

フランスの西海岸ラ・ロシェルビスケー湾に浮かぶボワイヤー要塞がでてくる。
ナポレオンが建造したそうだが、仮にここにホテルができても、日本人のわたしにはゆったりくつろげる感性はない。