「検証 『坂の上の雲』」 高井弘之著 えひめ教科書裁判を支える会発行

☆ 『19cから20c初めにかけて、世界の国家や地域は、他国の植民地になるか、帝国主義の仲間入りするか、その2通りの道しかなかった』 という論をよく耳にする。
 
著者は山形有朋の「外交政略論」をひいて、日本の領土は独力で十分守ることができ、また日本の領土をねらっているような国もまったくないと断言していると書く。
そして、植民地になる可能性のなかった日本が、列強と相互承認協定を結んでいくのは、「植民地になるか、帝国主義列強になるか」ということでなく、いかにして列強の妨害を排し、また支持をとりつけつつ、自らも植民地をもつ帝国になるか、ということだったという結論に至る。
 
日清戦争」を<第一次朝鮮植民地化戦争>、「日露戦争」を(第二次朝鮮植民地化戦争)と呼ぶことは両戦争の本質をとらえ、見誤らせないための表現だろう。
日露戦争を祖国防衛戦争ととらえる『坂の上の雲』とは相いれない。
 
「新しい歴史教科書を作る会」の藤岡信勝が、『坂の上の雲』との出会いによって、近代日本の歴史を正当化し、賛美するとらえ方に至った(藤岡信勝著『汚辱の近現代史』)というのも驚きだった。
 
司馬遼太郎の明治のとらえ方を批判的に分析する大切さを痛感した。