「おだんごぱん」(せたていじ、福音館書店)

☆ 昨日紹介した鶴見俊輔著「思い出袋」を読んでいたら、「おだんごぱん」のことが書いてあった。
 
鶴見は幼い頃家にあった「しょうがパン人間 Gingerbread Man」という英語の絵本を、絵から筋を想像して読んでいたという。
何十年か経て「おだんごぱん」を自分の子供に読んでやってはじめて、その内容を理解したとある。
 
家にもあるので取りだしてきた。
内容は、おじいさんに頼まれてだんごパンを焼いたおばあさんが、かまどから出して冷やしている間に、パンが自由に移動していく。
うさぎ→おおかみ→くま などに何度も食べられそうになりながらもやり過ごし、最後にきつねにだまされて食べられてしまう。
 
ロシア民話とあり、瀬田貞二訳 脇田和絵 で、色彩は淡くシンプル。
誰かに食べられるために生まれてきたパンが、ひととき自由を謳歌する。しかし、所詮食べられる運命のパン。
しかしひととき生き延びたパンを最後に食べるきつねの手法はなかなか狡猾だ。
 
「しょうがパン・・」の本の絵は最後が怖いようだが、「おだんご・・」のほうはパンを口にくわえているきつねも食べられようとしているパンも、とぼけた表情をしている。
 
鶴見は『自分の生涯がこの物語にすっぽり入っているようにも見える』と書いている。彼は87歳。