「君の名は 第1部」 大庭秀雄監督 1953作

★ 1952年ラジオドラマで大ヒットし、翌年映画化された。 なんと3部まである大作だ。
主題歌や、主人公が数寄屋橋で佇むシーンなどは、何度か聞いたり目にしたことがあるが、作品を見たのは初めてだ。
 
ヒロイン真知子の親友・綾の天真爛漫で、献身的な友情(リアリティに欠けるほどの)と、夫・勝則の豹変ぶり。
現実にはあり得ないナと思わせるほどのもので、その意味で一歩引いて安心して観ていられる。
勝則の嫉妬のすさまじさは、「氷点」(三浦綾子作)を思い出させた。
夫から逃げてきた真知子に対し、子どもを宿していることを聞いて、夫のところへ戻るように諭す春樹。(それはないだろう)・・・第1部はここで終わっている。
しかし、以前真知子も何年振りかでやっと数寄屋橋で出会えた春樹に対し、まもなく結婚すると告げる。(それはないだろう。 それならなぜ約束の場所に来たのだ?)
 
まだ、傷痍軍人があふれ、掘っ立て小屋が立ち並び、やっと占領が終わろうとする頃、日本の女性たちはこのドラマに惹かれたわけだ。
同じ菊田一夫の戯曲である「放浪記」に比べると、わたしにはリアリティがないように思われる。
春樹がモテ男過ぎる。 佐田啓二にぴったりの役柄だ。
むしろ、現実がまだまだ厳しいがゆえに、現実離れしたドラマに惹かれたのだろう。
 
2部・3部も観てみたい。