『鹽壺(しおつぼ)の匙』 車谷長吉 新潮文庫

★ この作品の初出は、新潮H4/3月号となっている。
もう20年前の作品だから、初出当時作者は46歳くらいで、結婚する2年前のことになる。
 
この作品は昔読んだことがあるが、以前は読み飛ばしており、今回『吃りの・・・』と合わせて読むと、『吃りの・・・』が3歳違いの弟との関係が中心であるのに対し、『鹽壺・・・』は21歳で縊死した叔父(母の弟)との関係が中心になっていることがわかった。
叔父が亡くなったのは、昭和32年5月22日で、作者は当時11歳。
 
表題の意味は、叔父が自死する少し前に、塩の入った土壺を鉄鎚で打ち砕くシーンがある。
ずっと昔から置かれてあった塩壺は、壺がかけらだけになっても、銀の匙を食い込んで石の状態のまま・・・という描写がある。
つまり、『業』の象徴と理解したが、まさに内容にふさわしい表題ではないか。
 
 
 
★ 今月12日以来行方不明の79歳のおばあさんのことが、音声告知放送の尋ね人で、朝に夕に放送されている。
すでに10日も経つし、この冷え込みでは絶望的だ。
 
 
★ ベランダの波板屋根の上で、時折りカラスが飛び跳ねる。
とても大きな音がするのでびっくりする。
波板に沿って雨どいが置いてあるが、これをつついて樋のつなぎ目を外すなどもいたずらもする。
以前、学校の水道蛇口にネットに入れて設置してある手洗いせっけんを、カラスがネットの結び目を外し、石鹸をくわえて持ち去るシーンをTVで見たことがある。