『黄沙の楽土』-石原莞爾と日本人が見た夢- 佐高信著

 
イメージ 1 ★ 次男が持ち帰っていたコミック『虹色のトロツキー』全8巻を読んで、石原莞爾について書かれたこの本に興味が湧いた。
 
石原莞爾(1889~1949)は関東軍軍人。満洲事変の実行者であり、満洲国国立大学『建国大学』を構想した人物だ。
 
建国大学では日本人・満州人・朝鮮人・モンゴル人・ロシア人らが学んだ。
 
この本の冒頭は犬養道子(石原否定派)と市川房枝(石原肯定派)の紹介から始まる。
 
 
著者は否定派だ。--以下 ◎は引用--
 
◎ 穂積五一の名は多くの人には知られていない。
もちろん、石原ほどに崇める人はいない。
しかし穂積こそが、石原にとってかわって顕彰されるべきではないのか。
アジアの人から見れば、石原は憎悪の対象である。
人気があるのは、その事績を丹念に検証したことのない日本人たちの間でにすぎない。
石原を推し、穂積を無視することが、どれだけアジアの人々を「日本人から離れ」させているか。(p254)
 
◎ 石原の東亜連盟思想にユダヤ人を入れる余地はなかった。
五族協和」とは言っても、その表皮を剥いでいけば、日本民族第一という地肌が出てくるのであり、石原もユダヤ人に天皇信仰を浸透させる自信はなかった。
あくまで「東亜」に限る「五族協和」で、「六族協和」に発展させる気はなかったのである。 (p270)
 
また、石原莞爾には無関係だが、満州国皇帝溥儀になぞらえ、1999年の周辺事態法について以下のように述べている。
◎ 賢しげに国際政治の力学とやらを持ち出して米軍基地の撤去は非現実的と主張する「達識名望ある日本人」もいるが、フィリピンはアジア最大といわれた駐留米軍クラーク空軍基地スービック海軍基地を閉鎖した。
そのフィリピン大学教授のマリーン・マガローナは、被爆国の日本がアメリカの核抑止力を肯定するガイドラインをそのまま受け入れようとしているのは信じられないと批判し、国際社会に誓った平和憲法を踏みにじる約束違反と慨嘆している。
ガイドラインは、日本がつくったカイライ国家の満洲に日本自身がなることであり、小渕恵三の溥儀化である。
(p240)