#読書

『誰も戦争を教えてくれなかった』 古市憲寿著 講談社

★ 著者は私の一番下の子供と同年齢の社会学者。 一昨年12月にピースボートに乗船した折、少しアクの強い感じの宮台真司やちょっと背伸びした感の開沼博とともに、年齢相応で等身大の自然体な感じがする古市憲寿も乗船していた。船内で販売されていた『希…

「宮沢賢治殺人事件」吉田司著 文春文庫

★ 暮れにこの本を読んだ。 賢治を神聖視する人にとっては、受け入れがたい内容かもしれないが、一人の人間として研究したい人には興味深く、うなずけるところが多い。 井上陽水にも、賢治に対する疑問を歌った曲があった。 前総理羽田孜と宮沢家の関係、東北…

「シベリア抑留とは何だったのか」ー詩人・石原吉郎のみちのりー畑谷史代著

★ 石原吉郎という人を知った。 1915年静岡県伊豆土肥村生まれ。 1938年東京外大ドイツ部を卒業し、39年応召、入隊。 ロシア語通訳として41年夏ハルビンの関東軍情報部へ。 29歳のとき、ハルビンで敗戦、シベリアへ送られ、8年間の抑留生活を…

「いま語りえぬことのために」ー死刑と新しいファシズムー 辺見庸著

★ 「青い花」に続いて8/31の四谷での講演が気になっており、この本を読んだ。 私は死刑廃止にもう一歩確信が持てなかったが、これを読んで確信に変わった。 ページを追って印象深いところを書き抜く。 ※ わたしたちは生得の諸権利のほとんどを、資本が主…

「日本に生きる北朝鮮人 リ・ハナの一歩一歩」 リ・ハナ著

★ 昨日は大菩薩嶺を歩き、正確にいえば今朝0:40に帰宅した。 一昨日、行きの車中でこの本を読んだ。 北朝鮮新義州で1980年代前半に生まれた著者が、18歳で脱北し中国での5年の潜伏生活を経て、大阪府内で暮らすまでの様子を、2009年春から2…

「喪の途上にて」野田正彰著

★ 精神科医野田正彰によって書かれた、主に1985年日航機墜落事故遺族の悲哀の研究だ。 事故は8月12日の夕方で、10月に次男を出産予定だった私は、大きなお腹でこのニュースを聞いた。 この本に当時妻(47歳)と娘(22歳)を事故で亡くした小豆島の…

「老子までの道」加島祥三著(朝日文庫)

★ 著者60代で、心を打たれた印象をつづった21の文章からなっている。 ――赤トンボの焼きもち――の章が面白かったので部分を抜粋する。 ベランダに座っていた時のことです。 ひとつがいの赤トンボが私の頭上を飛びすぎてゆき、それを目で追っていると、軒先…

『眉屋私記』上野英信著

★ 読み終わるのにほぼひと月かかった。 著者の経歴を知り、上野英信という人に興味を持ち始めた。 彼は7年余り存続した満州・建国大学に在籍していたが招集され、戦後京都大学に入るが中退し、筑豊で炭鉱労働者になった。 これまで『地の底の笑い話』『追…

辺見庸著『青い花』

★ 先月末四谷で辺見庸の講演会があった。 8月初旬に東京へ行ったばかりなので参加できず、内容が気になっていた。 そこで最新作のこの本を図書館で借りた。 今を生きている彼の想いが描かれている。 講演会後彼のブログが空白になっており、体調が悪化した…

上野英信

★ 「上野英信」なる人を知った。 初めに読んだのがこちらの『地の底の笑い話』。 ○mazonで1967.5.20第1刷発行を買った。 随所に山本作兵衛さんの挿絵が入り、理解を助けてくれる。 著者存命は1923~1987で、満州国建国大学(1938~1945)前期に進学し、在学中…

むのたけじ著『たいまつ十六年』

★ 昨日読了。 吉田邸を襲った葛原法生青年、国連総会での発言がかなわなかった久保山すずさんなど、この本で知ったいくつかをこれまでにも書いてきた。 文庫版あとがきで著者は書いている。 ――すべて書物は、それを手にする人が自分の必要や好みに応じて自由…

姜尚中著『心』集英社

★ 姜尚中の最新刊を読んだ。 彼はドイツ留学の経験があるので、ゲーテ著『親和力』 やまた漱石著『こころ』も読み込んでいるので、それらが本書のモチーフとしてある。 震災後の遺体引き揚げ作業に携わった20歳の青年と、姜尚中とのメールのやり取りで話…

むのたけじ その1

★ 今、むのたけじの『たいまつ十六年』を読んでいる。 自らの戦争責任をとり朝日新聞を辞めたむのたけじが、郷里秋田県横手市で昭和23年2月に創刊した週刊『たいまつ』が、30年後に休刊されるまでの前半16年間の抜粋が掲載された書物だ。 昭和25年…

むのたけじ著『戦争絶滅へ、人間復活へ』

★ 著者5年前の著書で、93歳の時のものだ。 むのさんは言う。 ―― わたしはこうして長生きして本当によかったと思っています。いままで人生とは、子供から青年になって、壮年になって、六十で定年を迎えて、あとは老いて死んでいく、というふうに考えられ…

姜尚中著『生と死についてわたしが思うこと』

★ 「アエラ」に連載されたコラム、2007年12月17日号~2012年11月26日号からの抜粋をまとめた本だ。 文庫は2013年1月30日に第1刷発行で、同年6月30日に第7刷が発行されている。 前書きに2010年に自死した彼の息子のことが書…

青木雄二・宮崎学著『土壇場の経済学』正・続

★ この二人の共著『土壇場の経済学』正・続をネット古書店で注文したが、続のほうが先に届いたのでそちらを先に読んだ。 この写真は正の方。 続は単行本になっていたがこちらは文庫本だ。 続は長男にウズベキスタンの土産と共に送ったので、今手元にない。 …

武野武治著『希望は絶望のど真ん中に』

★ 武野武治(むのたけじ)を知ったのはいつ頃だろう。 記録をめくってみると、2008.5.30にノンフィクション作家黒岩比佐子が、秋田で「たいまつ」を30年間発行したむのたけじ(1915生まれ、93歳)について書いたものがある、というメモがあっ…

『地獄への道はアホな正義で埋まっとる』宮崎学著 太田出版

★ 故中坊公平氏と安田好弘氏の絡みをを詳しく知りたくて、この本を読んだ。 まず、図書館に注文したが県内にはなかった。 そこで、ネット古書店で購入。 調べてないが、宮崎氏の著書は図書館にはないのかもしれない。 裏表紙の折り返しに、青木雄二氏との共…

「悩む力」「続悩む力」 姜尚中著

★ 姜尚中氏の長男が若くして亡くなった(2009年6月)というのは知っていたが、その背景も知りたくてこの本を読んでみた。 今年の1月末に、近所に住む次男の友人が数ヶ月前に亡くなっていたということを知り、若者の死について敏感になっていたこともあ…

「カムイ伝講義」 田中優子著

☆ 2008年に出版されたこの本 いつか必ず読もうと思っていた一冊を、先日ネット古書店で見つけて買った。 明日帰省する次男に持ち帰らせようと、急いで読んだ。 カムイ伝を読んだのはいつだったか忘れたが、私が読んだのは第一部15巻で、第二部と外伝は…

『富の王国 ロスチャイルド』 池内紀著

☆ 題名にも惹かれたが、著者にも惹かれて読んでみた。 著者はドイツ文学者で、彼の書いた山歩きのエッセイを以前読んだことがある。 表紙絵は しりあがり寿 さん。 私が読んでいると、夫は表紙だけ見て 「何の児童書を読んでいる?」 と聞いてきた。 戦争や…

『嫌われる日本人』 堺屋太一監訳 NHK出版

☆ 著者は1950生まれのスイス人、1970年チューリヒ大学在学中に来日。 1975~78年はペルーに暮らしたというBBC常連寄稿者。 1994年に第一刷が発行されているので、20年近く前だが、アジアから見た日本人論が述べられている。 訳者は喜多…

「タオ―ヒア・ナウ―」 加島祥造訳

☆ 以前図書館で借りようとしたが、県内になく取り寄せになるというので、(送料など実費負担なので1000円弱必要になる) アマゾンの古本を購入した。 あまり傷んでないが安く手に入った。 ここ数年は、ほとんどの本を図書館で借りるが、自分で購入すると慌て…

『希望難民ご一行様』 古市憲寿著 光文社新書

☆ 12/1~9 日韓合同ピースボートクルーズに参加した。 乗船中、講座やトークを受け持つ人を水先案内人と呼んでいたが、略称水案の一人がこの若手社会学者古市憲寿氏で、このおちょくったような表題に惹かれて本を買った。 内容は、ピースボートに乗船す…

『サルガッソーの広い海』

★ 8月に見た映画『ジェイン・エア』で、幽閉されているロチェスター卿の妻が西インド諸島出身のクレオール(植民地で生まれたヨーロッパ人)であり、この本は自らもクレオールであるジーン・リースが、『ジェイン・エア』が出版されてから約120年後に完成…

『遠い声』 瀬戸内寂聴全集6 新潮社

★ 中秋の名月は明後日だそうだが、台風襲来で見るなら今夜だと先ほどのニュースで言っていた。 今夜はよく晴れているのできれいに見られる。 ★ 金子文子を扱った『余白の春』に続いて、管野野須賀子を扱った『遠い声』を読んだ。 著者45歳のときの作品と…

『余白の春』 瀬戸内晴美著 中公文庫

★ 金子文子を詳しく知りたくて、この本を図書館に予約した。 中を見てみると、1975年初版で借りたのは1983年の第7版だが、古い本なので活字が小さく読みづらかった。 私のように老眼が進んでいる方は、新潮から出ている『瀬戸内寂聴全集第6巻』に…

『国策捜査』 青木理著 金曜日

★ 映画『死刑弁護人』を見た際のトークショーで青木理氏を知ったが、今回は『ルポ 拉致と人々』についで2冊目に、この本を選んだ。 東京地検特捜部を辞職し、弁護士を開業し「闇社会の守護神」と称される弁護活動をしていた田中森一氏が、手形詐欺容疑で古…

『静かなノモンハン』 伊藤桂一著 講談社文芸文庫

★ なぜノモンハン事件に興味を持つかというと、この戦いの真相が史実から隠され葬られようと、意図され続けているからだ。 ミッドウェイ海戦の死者数は、澤地久枝さんによって初めて明らかにされたが、ノモンハン事件は死者数さえ明らかになっていない。(日…

『夜と霧』 フランクル著

★ 東北の被災者の間で多く読まれているということを知り、再読した。 家にあるのは、霜山徳爾(1919~2009)訳1971年の第17刷のもの。 2002年に「世界がもし100人の村だったら」で有名な池田香代子(1948~)訳の新版が出ている。 こちら…