日本科学史学会第64回年会関連公開集会

⭐ 6月4日(日) 午前中、夕飯用におにぎらずの弁当を作り、17時~20時30分までの集会に備えた。
午後は太極拳の練習があるので、一旦帰宅し着替えもそこそこに高松に向かった。

この集会の大きなテーマは「現代科学技術の脅威 原発の核による放射能惨害に抗して」ということで、2部構成だった。
1部は「伊方原発運転差止広島裁判と被曝問題」で、原告団事務局長哲野イサク氏からの19ページに及ぶレジメを基にした報告があった。
その中で、偽善の「ヒロシマ」の説明があり、戦後広島には一貫して核の平和利用を善とし、それを推進する政治的環境が整備されてきたという。
例えば、平和公園のボランティアガイドは、市の担当部局から「原爆の話はいいですが、原発の話はダメですよ」と釘を刺されているという。
原爆(核兵器)はダメだが、原発(核の産業利用)はいい、という理屈は全く通らない。
原発」も「原爆」も第二次大戦中にアメリカの支配層が生み出した「醜い双子の兄弟」なのだ。

伊方3号機の仮処分申立は広島地裁大分地裁、山口地裁岩国支部などで行われているが、今年3月30日広島地裁吉岡茂之裁判長がその判断を示した。
その中身は川内原発運転差止仮処分における福岡高裁宮崎支部決定を丸写しにしたものだったという。
これに対して、法学者瀬木比呂志氏が松山地裁に提出した吉岡決定批判の意見陳述書骨子も資料添付されていた。

第2部は神戸大学の山内知也氏による~福島第一原発事故がもたらした甲状腺癌~と、同志社大学の藤岡毅氏による~『復興』に名を借りた被ばく健康影響科学の知見「無知化」に協力する日本の専門家~
の二つの話があった。
特に藤岡氏のアグノトロジー(Agnotology)の話は面白かった。
アグノトロジーとは科学的知見が失われ無知化していく歴史的過程を研究する分野をいう。
あるものをなかったことにする。確実なものが特定の意図をもって不確実なものにされる。
これは昨今顕著な歴史修正主義にも当てはまる。(Ex.南京虐殺はなかった)

その後のパネル討論では、物理学者高木仁三郎(1938~2000)が市民科学者育成のために、1998年創設した団体「高木学校」の紹介もあり、医療被ばくの問題も出た。
私も切実な問題なので、早速高木学校編著の「レントゲン、CT検査被ばくのリスク」を注文した。
ちなみに、一回のCT被ばくは10ミリシーベルトとのこと。

この日帰宅したのは9時40分だったが、心地よい疲れだった。