「資本主義の終焉と歴史の危機」水野和夫著 集英社新書
⭐ いい本に出会った。
なんでだろう、どう捉えたらいいのだろうと思う事柄が、「資本主義の終焉」の観点から分析・指摘され、腑に落ちる。
利子率革命とはデフレと長期不況が異常に長く続く現象をいう。
16cのそれは中世封建制の終焉と近代の幕開けを告げる兆候だった。
すると、1997年から日本で続く超低金利は、近代資本主義の終焉のサインではないかというのが、著者の立てた仮説だ。
資本主義の起源は、ローマ教会が上限33%の利子率を容認した1215年あたりに求められる。
不確実なものに貸し付けをするとき利息をつけてよいというリスク性資本の誕生だ。
これが資本主義誕生の契機となり、資本は自己増殖を続け、発展してきた。
しかし、利子率ゼロというのは資本を再投資し利潤を上げるフロンティアが消滅したことを意味する。
つまり資本の自己増殖が臨界点に達し、資本主義が終焉期に入っていることを示している。
アベノミクスのように成長を信奉する限り、それは近代システムの枠内にとどまっており、資本が前進しようとすればするほど、雇用を犠牲にする。
日本では1990年代後半から実質賃金の低下が始まるが、2002年から2008年にかけて戦後最長の景気回復があったにもかかわらず、賃金は減少した。→景気と所得の分離
1999年には労働者派遣法が改正され、2004年になると製造業への派遣も自由化される。
著者は資本主義の終わりの始まりを1970年代前半に見る。
空間を拡大し続けることが近代資本主義の必須条件だが、アメリカがヴェトナム戦争に勝てなかったことは、地理的・物理的空間が広がらなくなったことを意味し、モノづくりやサービスの実物経済で利潤を高めることができなくなった。
そこで「電子・金融空間」をつくり、レバレッジを高めることで利潤の極大化を目指した。
1995年以降、電子・金融空間に簡単に投資できるようになり、2008年のリーマン・ショックを迎える。
空間を拡大できなくなった資本主義は新たな周辺として、国境の内側で格差を広げる。
そうして中間層は没落し、同時に民主主義を破壊する。
民主主義を機能させるには情報の公開性が原則だが、国家といえども情報を独占することは許されない。スノーデン事件(国家の情報管理の秘密を暴き、特権者のからくりの存在を明らかにした)が問いかけているのは民主国家の危機なのだ。
まずは安倍内閣に退場してもらい、資本主義にも静かに退場してもらいたいのだが。
⭐ 「ひばり」その後
巣の発見から4日目、すでにヒナはいなかった。
近くの畔に少し飛んでは降りるたどたどしい3羽がいたので、多分巣立ったヒナだろうと思う。
蛇にもカラスにも食われず、雨にも炎天にも負けず、成長したようだ。