映画「サラエヴォの銃声」

⭐ 飛び跳ねてばかりで、経験を反芻する間もないことはよくないことだ。
なので、「サラエヴォの銃声」について書いておこう。

2016年公開作品だが、ダニス・タノヴィッチ監督は1914年のサラエヴォ事件から100年後、自分に見えている「ヴォスニア・ヘルツエゴヴィナ」の現代を描きたかったのだと思う。
原案はフランスの哲学者ベルナール=アンリ・レヴィ(1948生まれ)の戯曲「ホテル・ヨーロッパ」。

映画の舞台はサラエヴォの老舗ホテル、そこはサラエヴォ事件から100年の記念式典を行うための準備に追われていた。カメラは初めから終わりまで一歩もホテルから出ない。

ホテル屋上では女性ジャーナリストが、奇妙な男にインタヴューしている。
男の名は100年前の暗殺犯と同じ名前を持つガブリロ・プリンチプ、二人の間で暗殺犯はテロリストか英雄かで論争する。この場面は監督が力を入れた場面だと感じた。
つまり現在も100年前と同じ論争をしているということ。

ちょうど記念式典が行われようとしている日に、従業員たちは何ヶ月も無報酬状態であることの不満を抱え、ストライキを決行しようとしている。
そのストのリーダーとして、リネン室で長年働いているホテル受付嬢の母親が祭り上げられる。

ホテル受付嬢は全く付き合う気のないコックの男と一夜限りの関係を持ち、言いよるコックを無視する。その受付嬢は支配人からパワハラ・セクハラを受け、彼女に言い寄っていたコックはそれを知りながら見て見ぬ振りをする。

リネン室のスト・リーダーの母親は、支配人に事前に察知され、ホテル地下の怪しげなストリップクラブに監禁される。そこは汚い仕事をなんでも引き受ける支配人の手下たちの巣窟だ。

ホテル警備員の男は、職場に何度も電話をかけてくる妻とケンカが絶えず、コカイン中毒だ。

たまたま銃を持ち屋上から降りてきたガブリロ・プリンチプとコカイン中毒の警備員が階段で鉢合わせし、ガブリロは撃たれ殺される。

緊急事態発生でホテルから退避する人々と、ストが避けられず、やけ酒を飲みながらホテル内を呆然とうろつく支配人が対比的に描かれ、映画は終わる。

原案の戯曲で主人公を演じたジャック・ウェーバーという俳優が、映画ではホテルのVIP役で出演しているが、この人物の役割は私には理解できなかった。

ちなみに100年前の暗殺者ガブリロ・プリンチプは当時19歳だった。
オーストリア刑法では20歳未満の者は死刑にできず、20年の懲役刑が科せられたが、牢獄で肺結核を患い、大戦の終わりを知らないまま、短い生涯を閉じた。



⭐ ヒバリの巣を見つけた後、雨が続いたがヒナがどうなったか気になっている。
覗きに行くと、親鳥が警戒するだろうから見にいけないし…。
いくら野ざらしの場所に巣作りする生態とはいえ、雨に降られ、直射日光にさらされ、よく育つもんだと思う。
ヒナが孵ってから10日ほどで巣立つそうなのであっという間だ。