映画「判決、ふたつの希望」ソレイユ4F

※ 監督 ジアド・ドウエイリ/レバノン・フランス合作 113分

舞台はレバノンの首都ベイルート、自動車修理工のトニーと住宅補修の現場監督のヤーセルの間にいさかいが始まる。
キリスト教徒のレバノン人であるトニーとパレスチナ難民のヤーセルだが、長い内戦(1975~1990)の続いたレバノンでは現在でも様々な緊張が存在する。
そのなかでもキリスト教徒とパレスチナ系との間には激しい対立が続いている。

トニーの「お前たちなんかシャロンにやっつけられればよかったんだ!」の暴言に怒ったヤーセルはトニーに暴力を加え、肋骨を折ってしまう。
その結果トニーはヤーセルを訴え、映画は法廷ドラマとして展開していく。

シャロン:1982年当時国防相だったシャロンPLOが支配する南レバノンを占領し、PLOレバノンから撤退させ、親イスラエルのジェマイエル(ファランヘ党)をレバノン大統領に就任させるが、ジェマイエルは暗殺される。この報復としてファランヘ党民兵ベイルート近辺のパレスチナ難民キャンプで1000人前後を殺害した。》

このような背景を持つヤーセルは、トニーの発言に怒りを禁じることができなかった。
他方トニー側も1976年のダムール虐殺(パレスチナ民兵がカランティナ虐殺の報復として、ダムール村のキリスト教徒民間人150人~582人を殺害)を子供時代に経験し、その映像は裁判の中で上映されるが、そのトラウマに苦しんでいた。
この二人が、心を通わす場面がある。
ひとつめはトニーの仕事場に行ったヤーセルがわざと挑発し、トニーに自分を殴らせる。その直後にトニーに謝る。謝りたいために、相手に自分を殴らせる。
ふたつめは大統領の仲裁話を聞くために官邸に赴いた後、それぞれ並んで駐車していたヤーセルの車のエンジンがかからない。トニーは先に出発するが、バックミラーに写ったヤーセルの車の不調を見て引き返し直してやり、無言で去っていく。

裁判は二審まで進むが、原告側弁護士(父)と被告側弁護士(娘)が親子である設定で、父の方はしばしば感情的になるのに対し、娘は非常に冷静で、好感が持てる。
結末は被告側の勝利で終わるのだが、原告側弁護士(父)もよくやったなという表情で娘の勝利を認め、トニーとヤーセルも互いに無言だがかすかな微笑みを浮かべているラストだった。

レバノン人の監督の願いなのだろう。

この映画を観るために1:30に家を出て、5:30に帰宅した。
ウィークデーなのに行きは少し渋滞し、到着した時は既に始まっていたが本編には間に合った。
帰りに夫の夕食用にコンビニ弁当を求め、帰宅したときは軽い頭痛があった。
高松まで行くと、疲れを感じることが増えた。



※  先日次男が帰省した折、帰りのバスに乗る直前、27歳で自死した同級生の墓に線香を手向けに行った。もう6年前になる。墓の近くにひまわりの種が落ちていたと拾ってきた。
ベランダの鉢で来夏育てるのだろう。咲くといいな。