「きれいな絵なんかなかった」 アニタ・ローベル作 ポプラ社

★ 作者のアニタ・ローベルは1934ポーランド生まれのユダヤ人。 2歳下の弟とともに生き抜いた5歳から17歳までの記録が書かれている。 児童書を中心にポーランドに関したものを5冊ほど読んできたが、生々しさとともに息苦しいほどの緊迫感を感じた最大の本だ。
 
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表紙のこの写真は、作者10歳・弟8歳で赤十字に保護され、1945年5月にスウェーデンに上陸直後のもの。
 
ユダヤ人の男児は、生後八日目に割礼をするという。 ユダヤ人であることを隠すため、弟は女の子として生活してゆく。
 
いろいろな偶然が彼らの命を救った。 しかし幼い姉弟の聡明さなくして生き残ることはなかっただろう。
 
現在アメリカに暮らす作者はエピローグで書いている。 「ポーランドには一度も帰ったことがない。・・・アウシュビッツやプワシュフ、ラーフェンスブリュックの保存跡地に立ってみようとは思わない。」
この本を書くのに、どれほどの勇気が必要だったことだろう。
凄まじい恐怖をしっかりと思い出さねばならなかったのだから。
 
 
余談だが、児童書で名前を見かけるアーノルド・ローベル(故人)は彼女の夫だと知った。
我が家にも2冊の本がある。 ↓
 
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★ 裏庭のクスノキの葉っぱにあった蝉の抜け殻が、あんまりきれいなのでパチリ。
 
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