⑤「ヴィック・ムニーズ/ごみアートの軌跡」ドキュメンタリー

★ ヴィック・ムニーズは身近にあるもので絵画を制作し、写真に収める現代芸術家だ。
ブラジルの貧しい家庭出身の彼は、若い頃に喧嘩の仲裁に入った際に脚を銃で撃たれ、その賠償金で渡米しアーティストになった。

この作品は3年かけて撮影されたもので、現在の活動拠点のニューヨークから故郷ブラジルに飛び、リオ郊外にある世界最大のごみ処理場「ジャウジン・グラマーショ」で、リサイクル可能な素材を拾い集める「カタドール」と呼ばれる人々とともに、ごみアートを作る軌跡を追ったもの。

毎日7000トンのごみが運び込まれ、メタンガスが立ち昇る劣悪な環境の中、およそ3000人のカタドールたちが、金属やペットボトルなどの素材を集め、販売することで生計を立てている。
彼らの住まいはごみ処理場周りを囲むスラムで、麻薬・売春・暴力が蔓延する。

ムニーズはごみ処理場のガラクタを使って、カタドールの巨大ポートレートのモザイク画を彼らと一緒に制作するアートプロジェクトに着手する。
映画はポートレートの主人公たち一人ひとりのストーリーを追う。
一人の主人公チャオのポートレート作品はロンドンでの競売で高額落札され、リオでのごみアートのムニーズの個展は大ヒットする。
映画のラストで主人公たちの「その後」が伝えられる。
国連の環境会議で「ジャウジン・グラマーショ」の閉鎖が決まり、ブラジル政府はリサイクル制度を推進し、チャオはごみアートの落札で得た収益を活用して、カタドールたちが他の仕事を得られるよう職業訓練を呼びかけ活動していく。

監督はロンドン出身のルーシー・ウォ―カー、絶望的な現実の中に光を感じる作品だった。