輿那覇潤著「日本人はなぜ存在するか」その1

※ 著者に興味があり、2冊目を読んでみた。

“第4章「日本民族」とは誰のことか”の中に、【ウルトラマンも、正体を隠しながら生きる「マイノリティ」】の項がある。
そこで、“ウルトラシリーズ”のメインライター金城哲夫(1938~1976)を紹介している。

金城は6歳の時に沖縄戦を体験し、脚本家として円谷プロダクションに入る。
1966年夏から放映された『ウルトラマン』の設定には、沖縄出身の金城ならではの思想や葛藤が反映されている。
宇宙人(特殊能力者)としてのウルトラマンと、地球人=防衛隊員としてのふたつのアイデンティティを抱えた主人公は、「本当はどちらなのか」とつねに悩む。
だから、71年放映開始の仮面ライダーがおおむね人前でも平気で変身するのに対して、ウルトラマンは自分の正体を隊員同士の間でも隠し、人目につかないところで、一人ひっそりと変身する。

佐藤健志(1966~ )の解釈は、なんの義理もないのになぜか地球を守ってくれるウルトラマンに、「沖縄をいたわって欲しい」という金城の日本への期待を読み取る。
そしてその願望が「アメリカに日本を守ってほしい」という戦後の日本人の潜在意識と、構造的に同じだったと指摘する。
だからウルトラシリーズは(作者の意図を超えて)、頼もしいウルトラマン在日米軍の姿を見た、多くの日本人の心をもつかんだというのだが…。

つづく