加納美紀代さんの訃報

※ 留守中溜まった新聞を読んでいて、2月24日付で「加納美紀代さん膵臓癌で死去78歳、葬儀は行わない」の記事を見つけた。

家に思想の科学社から1979年発行された加納美紀代編の「女性と天皇制」という本があり、18人の女性の文章がまとめられている。
その中に茨木のり子の文章もあり、1951年4月戦後初めて東京で開かれた医学総会に義父を案内して会場に赴いた時、天皇の登場と挨拶があり、司会者の起立を促すアナウンスに、約半数の参加者は立たず座ったままの光景を目に焼き付ける。
軍医として戦争に行き、復員してきたばかりの若い医師たちも多く、断固アナウンスを拒否する姿勢は充分わかり、立つも立たぬも本人の気持ち次第、立たなくても何の咎め立てもしないという自由な雰囲気は、軍国少女として育った茨木のり子には新鮮だった。

そして茨木曰く、現在の私はと言えば、天皇と鉢合わせするような場所には絶対行きたくないが、もしそういう場所にぶつかって起立を強要されたら、断固立つまいと心に思い定めている。
〈自ら思い想う〉が思想なら、私の思想の根元には「尊敬するものぐらいは自分で決める」という考えがある。
強要される尊崇は、それが何であれ、もうまっぴらごめんである。

加納美紀代もまた茨木同様に筋を通した生涯だった。