「パンツの面目ふんどしの沽券」

筑摩書房から出ている米原万里さん著上記タイトル名の本を読んだ。

まあ、目から鱗のようなことがたくさんあった。

ひとことでいうとパンツ史が書かれてあるのだが・・・。

ロシアでは戦後しばらくまで、トイレの紙はおろか既製品のパンツはなかった。
男はルパシカ(シャツ)の前身頃の下端と後ろ身頃の下端で股を覆う。
それゆえルパシカの下端はひどく汚れて変色している。
黒パンとスープの食事で、日本人のウンチよりは固いらしいが・・・。
とにかくウンチの後、拭く習慣はなかった。
これは女も同様。
しかし、21c初頭においてさえ、紙で拭くのを習慣としていない地球上の人々は、2/3を占めている。
水・砂・木の葉・ボロきれ・小石・とうもろこしの毛と芯・樹皮・海草・海綿・木片・竹べら・ロープなどを使用している。

臥煙(がえん)といわれる江戸時代の鳶の人たちは、白昼往来を歩くときも真っ裸だった。
赤坂見附などのように地名として残っている見附は、そういう風儀の取り締まりをした所で、見附を通行するには裸は許されなかったが、臥煙は見附で手ぬぐいを肩にかけ、それで着衣したことになり、平気で通れたという。

ほんの2例をあげたが、微に入り細にわたりパンツ史にまつわる考察が繰り広げられている。

あとがきにあるが本書の上梓時、著者の病はかなり進んでいた。
最後の著書になったであろうが、すばらしいものを残してくださった。