ETV特集 「加藤周一 ’68を考える」

死の5か月前のインタヴューVTRだった。

心に残ったのは、「日本は明治以後一貫して、人間性を否定する政策をとってきた」という発言。
これを聞いた時、30年前に読んだ森嶋通夫著「イギリスと日本」(岩波新書)の一節を思い出した。
それは、イギリスはデモクラシーのために多大の経済的犠牲を支払っているということ。イギリスでは常日頃、利害の不一致をはっきりさせて、互いに言い分を尽くすという形でデモクラシーへの費用を充分支払っているが、日本では全体への奉仕と一致団結が強調されて、実在する利害の喰い違いに正当な配慮を払っていない、と述べている。

いつも思うのだが、田原総一郎などは単に経済成長という面だけを取り上げて、日本はうまくやってきたという。森嶋のいう「経済成長を低下させてでも、常日頃からデモクラシーへの費用を支払って、社会構造を是正する」という観点がない。

加藤周一のいう「’68」もそのようなことだと理解した。
今進行しつつある世界的な不況が、戦争ではなく、人間性の回復につながることを願う。


アルセーニエフ著「ウスリー紀行」を読み終えた。
何といっても、デルス・ウザーラの人間的な魅力に圧倒される。