映画 「海は燃えている」
⭐ 1週間ほど前、難民問題を扱った作品という予備知識だけで、ソレイユ2へ向かった。
上映は14時からで、通路を挟んだ隣の席のおばさんのいびきにしばしば集中力が途切れた。
主人公の少年はゴム鉄砲やボートで遊び、おじいさんは海に潜りウニを採り、おばあさんはパスタソースを煮込んだりベッドメーキングに忙しい。
穏やかな島民の暮らしと、命がけでやってくる難民が交互に描かれる。
島民と難民が触れ合うことはない。
その理由は後日ネットでわかった。
ジャンフランコ・ロージ監督は1964年エリトリア生まれ、独立戦争の中13歳で家族と離れイタリアへ。青年期をローマとイスタンブールで過ごした。イタリアの大学卒業後1985年ニューヨークに移住。イタリアとアメリカの国籍を持つ。
エリトリアと言われてもピンとこない。
このような背景がロージ監督にはある。
2013年10月3日密航船の火災転覆事故で、400人近い死者が出たことで、イタリアはマーレ・ノストルムと呼ばれる難民救出作戦を開始した。
マーレ・ノストルム以降、移民は海上で救助されるようになり、全てが組織化され制度化されてしまい、移民は海上で船に乗せられ、港から移民センターに移され、2~3日そこに滞在し、身分確認が終わってからヨーロッパ大陸に向かう。
島民と難民の交流がなくなった理由だ。
今はマーレ・ノストルムからEUの欧州対外国境管理協力(Frontex)に取って代わり、人身取引をする犯罪者に頼るなどいっそう酷い状況になっている。
初めから難民がいるわけではない。
難民も元はランペドゥーザ島の住民のように、ささやかで穏やかな暮らしがあったのだ。
このドキュメンタリー作品も、島民と難民が交互に描かれることでそれが示されている。
ロージ監督は言う。
イタリアとアフリカは支配・被支配の関係だった。
しかし、イタリア人は人種を超えた統合が不可能な国だ。
現在のイタリアには、三世、四世のエリトリア移民がいるのに、フランスやイギリスのように国の社会的、経済的な一部になっていない。
組織化された社会であり、変化を許さない停滞したシステムが残っている。
イタリアの停滞、衰退の背景にはそれらが大きな要因になっているのだろう。
しかし、日本はイタリアによく似ているではないか。
イタリアにも行ってみたいが、大手旅行社のツアーはもういいとつくづく思う。