「日本 根拠地からの問い」姜尚中・中島岳志対談

毎日新聞社から2008年に出版されたので、もう13年も前になる。

対談形式がとても生かされた本だった。

一部分抜粋したい。

中島・・・今、保守的に見える政策を支持している人たちは、ものすごく変わりやすい。僕がそれを一番感じたのは06年の8月15日で、小泉首相靖国参拝をする前までの世論調査は、たしか、7割方が反対だったんですよね。参拝直後の世論調査は7割方賛成になった。ここで動いた4割は、ものすごくグロテスクな層だと思う。間違いなくここが、戦前のファシズムを支えた層なのではないか。むしろ、「首相は靖国に行くべきだ」と論理立てて話をしている人はいい。なぜならば、その人とは議論が成立するから。

 保守は、他者との価値の葛藤に耐えながら、合意形成のプロセスを重視する。だから、熱狂を嫌うんですね。それが本来の保守ですが、今、保守的な何らかのものを支持している層は、熱狂した大衆ですよね。(p148)

 

中島・・・岸はA級戦犯になって巣鴨に拘束されていた時代、アメリカ側とおそらくいろんな交渉をしている。彼が訴追されなかった理由は、アメリカが日本の指導者を誰か残そうと思って、それを岸にしようとしたからではないでしょうか。そうなると岸は、やはりどこかで自分がのし上がらなければならないと考え、保守合同にうまく滑り込んでいく。

そして、タイミングよく湛山が倒れてくれて、【石橋湛山は1956年12月に首相となったが、翌月、脳梗塞で倒れて辞任。外相の岸が総理臨時代理となり、そのまま首相を交代した。】(p180)

 

姜・・・岸は根っこの部分で、徹底したアメリカ嫌いだったんじゃないかという気がする。巣鴨プリズンに入るときに、真っ裸にさせられて、屈強な二十歳前後のMPから、下までDDTを吹きかけられて。これは、彼にとって屈辱以外の何ものでもない。しかしそのアメリカにつくことでしか生きながらえなかった。そこに彼の凄みがある。そんなことがよくもできる、というね。(p186)

 

図書館で借りた本だったので返却日が近づき、数日は食事作りも草抜きも放り出して、ひたすら読んだ。