ドクちゃんの今

☆ ベトナム戦争で米軍が使用した枯葉剤に含まれていたダイオキシンの影響で、腰から下がつながった状態で生まれたベトちゃん・ドクちゃんの双子は1980生まれだ。
7歳の時に分離手術が行われたが、ベトちゃんのほうは数年前に亡くなった。
 
ドクちゃんの今がTVで放映されていた。
彼は今、分離手術が行われたツズー病院で、パソコン入力の仕事をしており、双子の父になっていた。
 
生まれてすぐ病院に引き取られ、分離手術を受けるまでの7年間を母や姉と暮らさなかったことで、彼女たちとお互いに溝ができてしまっていた。
父は彼らが生まれてまもなく母と離婚し、今は新しい家庭をもっており、交流はないがドクのことを思っている。
 
ドクは病院の仕事だけでは将来二人の子供の教育費が心配と、土日に旅行業者で働き始めた。
主に日本人観光客と写真を撮ったり会話をするのが、そこでの仕事だ。
観光客が彼と握手し、「どうぞお元気で頑張ってください。」とことばをかける。
 
そのシーンが妙に心にひっかかった。
ドクにとってそのアルバイトを得たことは喜ばしいことだし、観光客にとってもベトナム戦争の象徴の一人であるドクに会うことは貴重な体験なのだろう。そして心から彼の幸せを願っているのだろう。
 
しかし、枯葉剤の残虐さを深く理解するには、もっともっと症状の重い人たちの存在を知ることが必要だし、この仕事を続けることが、彼の精神を行き詰まらせる危険も感じた。
観光業者の意図の中に、人々が持つ物見遊山な気分を利用する一面が見える。
 
ドクちゃんは今、2児の父として懸命に生きていた。