Three days in Tokyo

 今月初めの三日間を東京に遊んだ。
 
★ 11/2・・・世田谷美術館
 正規の美術教育を受けずに制作した作家たちの作品が展示されていた。
 
イメージ 1 ビル・トレイラーの「人と犬のいる家」
85歳から描き始めたという。
家の中には女性と子供がいる。
絵の意味はわからないが、平和なイメージだ。
 
 
 
イメージ 2 久永強の「鬼の現場監督」
4年間のシベリア抑留を経験した久永強は、香月泰男の作品を見て、自分の経験したシベリアを描きたいと60歳を過ぎてから絵筆を執った。
このロシア人男の目を見たら、忘れることはできない。
 
 
 
 
 
イメージ 3 久永強さん。
86歳で没。
 
 
 
 
 
 
 
午後はこれらの作品展に関連した、想田和弘監督の映画「精神」を見た。
岡山県生活保護者を対象にした精神科医院のドキュメンタリー。
 
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上映後は想田監督のトークで、左の女性は美術館の学芸員
終わって外に出るとすでに真っ暗で、迎えに来てもらうタクシーの待ち合わせ場所に行くのに方向が分からず、時刻が迫っているので走ったら、息切れがいつまでも治まらずゼーゼーと苦しかった。
 
 
★ 11/3・・・町田市立国際版画美術館
 
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右の小さな入り口はレストランで、メニューは多くなく、薬膳カレーを食べた。
当日は文化の日で入場料が要らなかった。
企画展は「縁起物吉祥図」、常設展は「棟方志功」。
1Fに収蔵品紹介のハイビジョンギャラリーがあり、時間が許せばゆっくり見たかったが、「東海道五十三次」をはじめ4本ほどで切り上げた。
 
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美術館に用事がなくとも、散歩を楽しむ人も多い。
 
午後は町田が古着の聖地として有名とのことで、地図を手に8軒ほど巡った。
ところが、首回りや袖口が擦り切れたシャツが5~6千円もしたりして、わたしには価値が全く分からないし、欲しいものもなかった。
 
 
★ 11/4・・・新宿ピカデリー紀伊国屋サザンシアター
 
 午前は是枝祐和監督「そして父になる」をみた。
姜尚中がこの作品を見て、『心が痛かった』と述べていた理由がわかった。
わたしは電気屋夫婦に育てられた子が、マンションで暮らすエリートサラリーマン夫婦と暮らさねばならないと聞かされた時、「なんで? なんで? なんで?」と問うシーンが印象に残った。
子供のこの疑問は当たり前だが、サラリーマン夫婦に育てられた子は、それを口にしない。
 
私たち大人もなんで?と思う事柄に毎日のように出くわしているのに、いつの間にかわかったようなふりをして口をつぐんでしまう。
 
サラリーマン夫婦の妻が夫に言う。
「あなたのあの言葉は生涯忘れない!」・・・それは夫が子供に対する失望を口にしたことだが、夫は妻の言った(あの言葉)に気づかない。母親は子供を丸ごと受けとめようとするが、父親は得てして自分の型にはめたがる。
映画の終盤はサラリーマン夫が自分のこれまでの子供への接し方の間違いに気づき、新たな父親となるべく子供に許しを請うのだが、これは映画の話で、現実はこうはいかない。
 
世の親子関係、夫婦関係の壊れの多さは現実が映画のようにうまくいかないことを示している。
サラリーマン夫婦の妻が夫に感じた違和感は夫婦に距離を作る。
このような経験の後では、一心同体、仲良し小好しの夫婦ではありえない。
何十年と連れ添っている世の多くの夫婦は、このような距離感を持ちながら夫の世界、妻の世界を作っている。
 
午後はこまつ座「イーハトーボの劇列車」をみた。
以前見た矢崎滋と佐藤慶バージョンのVHSテープが残っていたので、娘の家にもって行ったが、娘はデッキを処分していてなかった。
東京の狭い部屋では、古い機器を置いておくことはできないだろう。
新バージョンで私の知っている役者は木野花だけだった。
演出も前作とかなり違っているが、「想い残し切符」は同じ感動を味わった。