ある行旅死亡人の物語

※ この本によれば『「行旅死亡人」とは病気や行き倒れ、自殺などで亡くなり、名前や住所など身元が判明せず、引き取り人不明の死者を表す法律用語。』とある。

著者は武田惇志と伊藤亜衣という共に1990年生まれの共同通信記者。

図書館で借りたのはもう1週間も前のことだが、あまりにも面白くてブログに書いておこうと思い、2度目を通した。

T記者が官報の記事で、ある行旅死亡人を見つけた。

それによると、75歳くらいの右手指が全て欠損した女性で、現金約3500万円が金庫に保管されていた。発見されたのは2020年4月26日午前9時4分、尼崎のあるアパート2階玄関先で絶命した状態で発見された。

官報に出されたのは2020年7月30日。

T記者は同じ大阪社会部の同僚I記者に2021年6月、この行旅死亡人の話を持ちかけた。

 

それから約半年余りTとIはついにこの死亡者の本名と本籍地を突き止め、2022年2月20日と21日に記事を配信する。

警察にも探偵にもできなかった真相究明を新聞記者が突き止める。その間の6ヶ月余りの顛末をドキュメンタリータッチで出版した。死亡者の実年齢も12年も上の1933年生まれであることがわかった。

それ以外にもこの死亡者の周りには謎がいっぱいで、わかったことはほんの一部だ。

健康保険にも入らず、年金も受け取らず、身を隠して87年を生きた人の確かに生きた事実を突き止めた記者2人にありがとうと伝えたい。