『取り替え子』 大江健三郎著 講談社

★ 1997年、女性問題でビルから飛び降り自殺と報道された伊丹十三の死の周辺を知りたくて読んでみた。
 
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 結論から言って、この本は大江と大江の妻(伊丹の実妹)が彼の死をどうとらえようとしているのか、読者に想像させるものだった。
 
8章に分けられた構成の意味も私には理解できなかったが、
大江がこの本を上梓することによって、伊丹の死について心の整理をしたのだろう。
 
伊丹の死の前年に亡くなった大江の親しい友人であった音楽家武満徹、師である渡辺一夫などが登場するが、それらはある程度大江の周辺を知っていなければ理解できない。
 
第三章の「テロルと痛風」では大江や伊丹の私生活を取り巻く危険を想像させる。
 
1952.4.28の講和条約発効が大江と伊丹にとって、どれほど大きな意味をもっていたのか。
 
 
混沌は深まるばかりだが、伊丹の死は自殺ではなかった気がしてきている。