保阪正康と平成天皇夫妻の会談

※ 今年の文藝春秋1・2月号に保阪正康の貴重な経験が載った。

2013年2月から2016年6月にかけて、保阪は平成天皇夫妻と計6回の懇談の機会を得た。この頃は天皇夫妻が間もなく80代を迎える時期で、あるときは磯田道史を伴い、またあるときは加藤陽子や半藤末利子を伴ったが、常に半藤一利が一緒だった。

はじめ保阪に御所での懇談を持ちかけたのは半藤一利だが、半藤にそもそも平成天皇との会話のきっかけを作ってくれたのは半藤の古くからの友人松尾文夫で、この人は数年前アメリカで客死した。

この寄稿で強く感じたのは平成天皇夫妻の戦争への向き合い方だ。

象徴とは何かという点についても真摯に考え、自分の子供を自分で育てるという皇室内の改革にも取り組んだ。

半藤や保阪は昭和史研究の第一人者だし、加藤も1930年代の軍事と外交の研究ではトップクラスの人だし、磯田も先に書いた御所での懇談で満州事変を語ったようだが、その内容からか後々の2018年には御所で夫妻に進講している。

平成天皇は常に「国民と共に」と発言し、美智子さんも79歳の誕生日の際、五日市憲法草案に書かれた民権意識を世界でも珍しい文化遺産だと述べた。

 

平成天皇夫妻の真摯な願いに抗い、自民党政府は戦争への道を歩んでいる。

基本的人権を持たない天皇家は「国民と共に」と懸命に叫んでいるのに、国民は自民党を支持している。

 

今回保阪正康の寄稿を読んで、ベールに覆われた平成天皇夫妻の一端が垣間見えたと同時に、先に取り上げた人たちとの懇談の機会があることを知り、嬉しかった。

何らかの機会に保阪さんのように、磯田さんや加藤さんにも懇談を発表してほしい。