桐野夏生著「バラカ」

★ これほど読み始めたら止まらない小説に出会ったのは何年ぶりだろう。

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著者桐野夏生小説すばるに、2011年8月号~2015年5月号までこの作品を初出し、今年2月末に集英社から単行本化した。
帯に――私の「震災履歴」は、この小説と共にありました。――と書かれているが、あの地震から7時間後のメルトダウン発生から放射能は外界に放出され始めた。
著者はその直後から書き始めずにはいられなかった。

わたしたちの日常は目隠しされていることがあまりにも多い。
オリンピックも万博も目隠しの一つだ。目隠しは時に宗教やボランティアに姿を変えることもある。 どうしたらそれらを外し、真実を知ることができるのか。

放射能という大きな大きな不安を著者と共有できたことが、仲間がいると思え、うれしい。


★ 昨日、香川町大野「称讃寺」で開かれた山折哲雄上野千鶴子の講演会にでかけた。
台風18号が最接近する日だったので、風雨がひどければ止めるつもりだったが、運よく逸れてくれ行くことができた。
開始の1時間前に家を出たが、仏生山町の東の狭い道で警察官が立っており、この先で人身事故があったので迂回してくれと言われた。
この辺りの地理に詳しくないので、ナビ頼りて運転していたが、北→西→南と迂回したつもりで進むとそこにも警官がおり、もっと広範囲に迂回しなくてはならなかった。
ウロウロした上に、会場周辺の駐車場探しでまたグルグルし、中には入れたのは開始直前だった。
寺の本堂はすでに聴衆でいっぱいで、となりの控えの間でTVモニターを見ながら山折さんの話を聞いた。 テーマは『ひとり』ということ。
印象に残った話があった。それは宮沢賢治の「雨ニモマケズ」のなかの「ヒデリノトキハナミダヲナガシ」で、これは「ヒドリ」が正しく、高村光太郎が「ヒデリ」と書き換えてしまったという話。
詳しくは↓
を見てほしい。真相はわからないが、こういう論争がある。
このブログの作者は光太郎がヒドリをヒデリに書き換えたとは考えられないとしている。

午後からは上野さんの話。 テーマは『女おひとりさまと男おひとりさま』、社会学者らしく具体的な統計数字をだし、面白く解説してゆく。
現在日本の家屋の13%は空き家だという。この数字はうなぎのぼりに上昇してゆくことは想像に難くない。 相続人のいない老人の死去で国庫に入った故人のお金は平均600万円/人である。(皆さんけっこう持ってますね)
彼女は言い切る。 在宅一人死は可能だと。
癌なら在宅看取り死は100%で、在宅ターミナルケアは可能だと。
話の最後は介護保険制度をつぶそうとしている安倍政権の痛烈な批判で、万雷の拍手を浴びた。

お二人とも話は実に上手い。