『眉屋私記』上野英信著

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★ 読み終わるのにほぼひと月かかった。
著者の経歴を知り、上野英信という人に興味を持ち始めた。
彼は7年余り存続した満州・建国大学に在籍していたが招集され、戦後京都大学に入るが中退し、筑豊で炭鉱労働者になった。
これまで『地の底の笑い話』『追われゆく坑夫たち』と読み継ぎ、これは3冊目だが、すんなりとは読めなかった。
沖縄の地名と沖縄言葉、漢字・カタカナ表記の文章になると、ぐっとペースが落ちた。
 
「眉屋」とは沖縄・名護湾北岸に1840年ごろ起こったある家庭の屋号だ。
その家庭の夫婦から4代目にあたる山入端萬栄(やまのはまんえい 1888~1959没)の記録が、この本の中心になっている。
 
著者の上野英信は、1960年琉球新報から発行された山入端萬栄著『わが移民記』を読み、1978年メキシコへ向かう。
そこで炭鉱移民と出会い、眉屋を知り、萬栄の7歳下の妹ツルを知り、この本の誕生となった。
 
萬栄のメキシコへの移住は1907年(19歳)だが、数年後キューバへ移り、カストロの革命政権が樹立した1959年ハバナ市で病没、享年71。
1924年から3年間のキューバへの移民は全国378人を数え、内沖縄からは125人で33%を占めている。
 
上野英信キューバへも取材に行きたかっただろうがかなわず、1987年没。
『眉屋私記』は続編に興味が向くが、上野に代わる著者が出てくれないものか。
 
2007年に波多野哲朗監督で、『サルサとチャンプルー』という沖縄とキューバの関係を描いた映画が製作されている。 観たい。