「ルイズ――父に貰いし名は――」松下竜一著

★ 昨年1月アムネスティ映画祭の帰りに立ち寄った、銀座の「ギャラリーバーカジマ」で、オトカムの会会員だというおじいさんに出会った。
オトカムとはm ac o t o を逆から読んだもの。
macotoとは辻まこと(辻潤伊藤野枝の長男)のことで、病気を苦に62歳で縊死した。
父の辻潤は精神を病みながら、まことが31歳のとき餓死している。
カジマで出会ったおじいさんの会員ナンバーは1600を超えていたので、辻まことファンも多いのだと知った。
 
伊藤野枝はまことが3歳、弟の流二はまだ乳児のとき、夫と二人の子をおいて大杉栄と一緒になる。 大杉と野枝の間には4女1男が生まれ、四女が伊藤ルイ(ルイズ)で、まこととは異父兄妹にあたる。
 
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私が読んだのはこの文庫本だが、単行本は1982年に出ている。
アナキスト大杉栄伊藤野枝の子として生まれ、1歳で両親は虐殺され、野枝の実家がある福岡市近郊に引き取られた。
その後の60年弱のルイの人生が、松下竜一の1年半にわたる聞き取りでまとめられている。
 
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「ルイズ」の単行本が出版されたころの松下竜一(45歳ころ)。
 
大杉栄が香川の出身であることを最近知ったが、「種の起源」や「ファーブル昆虫記」を訳した著名人であるはずの人物が、アナキストとなると差別され隠される。
 
松下竜一もまた多くの市民運動に参加し、警視庁の家宅捜査を受けている。
「絵本」という、早世した親友から自分の幼子に絵本が送られてくる内容の作品が、1992年ころ東京書籍発行の中学校用国語教科書に載ったが長期間ではなかった。
この作品は、多くの人から印象に残っている教科書の作品の一つに上げられている。