『国策捜査』 青木理著 金曜日

 
イメージ 1 ★ 映画『死刑弁護人』を見た際のトークショー青木理氏を知ったが、今回は『ルポ 拉致と人々』についで2冊目に、この本を選んだ。
 
東京地検特捜部を辞職し、弁護士を開業し「闇社会の守護神」と称される弁護活動をしていた田中森一氏が、手形詐欺容疑で古巣の東京地検特捜部に逮捕された。
その田中氏は言う。
――裁判官の前で言うことと、検事による調書のどちらが果たして正しいのか。
現在の日本の裁判は、法廷よりも検事の前で喋ったことが正しいということが前提となっているんです。法廷で調書と異なる訴えをしても、聞き入れられることなどほとんどない。
いくら裁判で訴えても、検事に調書を取られたら、それで終わりなんです。
どんな弁護士でも覆すのは容易ではない。・・・これは日本の司法制度と法律が抱える最大の問題です。――(調書主義)
 
刑事裁判において検察が起訴した事件の99.9%が有罪になっている。
また、日本の刑事訴訟法は、起訴後から保釈請求をできると定めた上で、殺人などの重罪や証拠隠滅の恐れがある場合などを除いては、保釈を原則としている。だが、現状ではほとんどの場合、被疑事実を否認すれば保釈を認められず、長期の勾留を余儀なくされる。――(人質司法)
 
映画「死刑弁護人」の主人公安田好弘氏は、司法の場で真実が通らない理由のひとつに、「司法の世界の官僚化」をあげて述べている。
――通常の法廷では三人の判事のうち中央に裁判長が座り、左右の判事の人事考課を行なう。 裁判長の考課は裁判所所長が行ない、所長の考課は最高裁がする。判決を合議で決めるなんて嘘っぱちで、完全なタテ社会になっている。・・・結果、どういうことが起きるか。出世のために常に上級審や上司、あるいは検察の意向ばかりを気にする「ヒラメ裁判官」の横行だ。――(ヒラメ裁判官)
 
沖縄返還協定を巡る日米密約に関して、行政・検察・司法が一体となり組織的犯罪者となった事を述べた西山太吉氏の章も興味深かった。